2025年の前田健太の年俸は1000万ドル
前田健太選手の2025年年俸1000万ドルは、デトロイト・タイガースとの契約に基づくもので、2023年オフ、2年2400万ドル(約36億円、1ドル150円換算)で合意したこの契約は、2024年と2025年の年俸がそれぞれ1200万ドルと1000万ドルに設定されています。
この契約は、前田選手が2023年に見せた復調を背景に、球団が彼の経験と実績に期待を寄せた結果です。

前田健太 2025年 MLB
しかし、2024年シーズンの不調により、タイガースからDFAを受け、シカゴ・カブスとマイナー契約を結ぶに至りました。
このマイナー契約では実質年俸が76万ドル(約1.14億円)に抑えられていますが、興味深いのは、年俸1000万ドルの差額をタイガースが負担する構造です。
つまり、前田選手は成績不振にもかかわらず、経済的にはほぼ無傷で1000万ドルを確保できています。
この仕組みは、MLBの保証契約の特性によるものです。
タイガースとの契約は「保証型」で、DFA後も契約満了まで年俸が支払われます。
カブスとのマイナー契約は、メジャー昇格時に追加報酬が発生する可能性がありますが、2025年は基本的に76万ドルで運用され、残りはタイガースが補填します。
この構造は、前田選手にとって大きなリスクヘッジとなります。仮にメジャー復帰が叶わなくても、経済的安定は揺るぎません。
また、タイガース側も前田選手の放出により若手起用を進めつつ、契約責任を全うしています。
これはMLBのビジネスモデルとして一般的で、前田選手のキャリアにおける「信頼」の裏返しとも言えます。
さらに、このような契約形態は、ベテラン選手がキャリアの後半で直面するリスクを軽減し、チーム側も柔軟なロースター管理を可能にします。
前田選手の場合、タイガースが負担する1000万ドルは、彼の過去の貢献への敬意とも捉えられるでしょう。
なぜ1000万ドルの契約に至ったのか?
1000万ドルという高額契約は、前田選手の過去の実績と経験が評価された結果ですが、年齢や手術歴を考慮した短期・出来高抑えめの契約が選ばれた背景には、復調と不安定さの両面が見えます。
2021年にトミー・ジョン手術を受けた前田選手は、手術後のリハビリは想像以上に厳しく、球速や制球の回復に時間を要しました。
しかし、2023年には21試合に登板し、防御率4.18、104.1イニングを記録。完全復活とは言えないまでも、先発ローテーションの一角として機能し、タイガースとの2年契約を勝ち取りました。
この時点で、前田選手の「実績買い」が明確でした。
2016年から2020年までドジャースやツインズで安定した成績を残し、特に2020年にはサイ・ヤング賞投票2位に輝いた実績は、球団にとって魅力的な投資対象でした。

前田健太のドジャーズ入団時
彼の投球スタイルは、速球と変化球のコンビネーションに優れ、打者を翻弄する精密な制球力が特徴でしたが、2024年は一転して不調に陥り、防御率6.09、WHIP(1イニングあたりの出塁許容率)1.38と、期待を大きく下回る成績が続きました。
特に、制球難と球威の低下が顕著で、8イニングで9四球を出すなど、かつての精密機械のような投球は影を潜めました。速球の平均球速は91マイル(約146km/h)から89マイル(約143km/h)に低下し、変化球のキレも失われました。
それでも、タイガースが1000万ドルを保証したのは、前田選手のNPB時代からの圧倒的な成績からくる「経験」とその経験からくる若手への「リーダーシップ」に価値を見出した可能性と考えています。
35歳(2025年時点で37歳)という年齢や手術歴を考慮すると、長期契約や高額の出来高はリスクが高いため、2年という短期契約に落ち着き、出来高も最小限に抑えました。
これは、前田選手の復活を信じる一方で、球団の財務リスクを軽減する現実的な判断だったと言えます。
さらに、タイガースは若手投手の育成を優先する方針を掲げており、前田選手の経験はローテーションの安定だけでなく、若手への指導にも期待されていると考えています。
2025年の成績と年俸に見合うかの評価
2025年シーズン序盤の前田選手の成績は、1000万ドルの年俸に見合わないと厳しく評価されています。
登板7試合で防御率7.88、WHIP1.88、8イニングで9四球を記録し、制球難と球威不足が顕著です。
米メディア『Bleacher Report』は「前田の投球は1000万ドルの価値に遠く及ばない」と断じ、一部のファンからも「高額契約の失敗例」との声が上がっていました。
この背景には、2024年の不調が継続している点に加え、年齢によるフィジカル面の衰えが指摘されています。(参考:スポニチにて落合博満氏による前田健太低迷の理由)

前田健太
特に、速球の平均球速が90マイル(約145km/h)を下回り、変化球のキレも失われている点が課題です。
データ分析サイト『FanGraphs』によると、前田選手のFIP(防御率から運の要素を除いた指標)は6.90と、平均以下の先発投手と同等レベルです。
具体的な試合内容を見ると、4月5日のWソックス戦では1イニングで3失点、投球数34球、1四球を記録し、制球の乱れが明確に露呈しました。
続く4月15日のブリュワーズ戦でも、2イニングで1失点と結果を出せず、ファンの失望を招きました。さらに、4月19日のロイヤルズ戦でも、0.1イニングで2失点と、失点が続きました。
これらの試合では、四球によるランナーの蓄積と、決め球の甘さが失点に直結しました。
1000万ドルはMLB先発投手の平均年俸(約800万ドル)を上回る額で、コストパフォーマンスの悪さが際立ちます。
ただし、NPB時代から培ってきた経験と実績は前田選手の若手への指導力があると考えており、それは数値化しにくい価値です。
こうした「見えない価値」があると仮定しそれを考慮すると、短期的成績だけで評価するのは早計かもしれません。
それでも、ファンやメディアの期待に応えるには、目に見える結果が求められるのも事実です。
DFA後のマイナー契約と実質年俸の構造
DFA(Designated for Assignment)とは、40人枠から選手を外し、トレード、マイナー降格、または自由契約のいずれかを選択する制度で、前田選手は2024年シーズン途中にタイガースからDFAを受けました。
成績不振が主因ですが、タイガースのロースター整理や若手登用の戦略も背景にあります。
具体的には、タイガースは若手投手の台頭により、先発ローテーションの再編を進めており、前田選手の不調がそのタイミングと重なりました。

タイガース時代の前田健太
DFA後、前田選手はシカゴ・カブスとマイナー契約を結び、実質年俸76万ドルで2025年を戦います。
この76万ドルは、MLBの最低年俸基準に基づくもので、メジャー昇格時には追加報酬が発生する可能性があります。
ただし、1000万ドルの大半はタイガースが負担し、カブスは低リスクで前田選手を起用できる構造で、この契約形態を整理すると、以下のようになります。
- まず、タイガースとの2年2400万ドル契約は保証型で、DFA後も年俸支払い義務が残る。
- カブスとのマイナー契約は、基本的にはAAAでのプレーを前提とし、メジャー昇格時に年俸が再調整される。前田選手にとって、この仕組みは「低リスク・低リターン」の選択となる。
- 仮にメジャー復帰が叶わなくても、タイガースからの1000万ドルは確保される。
- 一方、カブスは前田選手の復活に賭けつつ、財務負担を最小限に抑えられる。
カブスはベテラン投手を低コストで起用し、復活を促した実績があり、前田選手にも同様の期待が寄せられています。(参考:2025年にホワイトソックスから獲得したクリス・フレクセン投手は2025年5月18日現在で4試合、1勝0敗、防御率0.00と活躍している)
MLBの契約制度の柔軟性が、前田選手のようなベテラン選手のキャリア継続を可能にしています。
さらに、この構造は選手会との協定に基づくもので、選手の権利保護と球団の経営バランスを両立させる仕組みと言えるでしょう。
MLB日本人選手との年俸比較で見える評価の現在地
前田選手の1000万ドルをMLBの日本人選手と比較すると、成績と役割のバランスで「コスパが悪い」との評価が浮かびます。
- 大谷翔平選手(ドジャース、年俸7000万ドル)は投打二刀流の歴史的活躍で別格です。2024年は打者として打率.310、54本塁打を記録するなど、MLBの顔としての地位を確立しました。
- ダルビッシュ有選手(パドレス、約2500万ドル)は2024年防御率3.31、80イニングながら7勝3敗と、エース級の働きを見せます。
- 鈴木誠也選手(カブス、約1900万ドル)は打率.283、21本塁打以上と安定した外野手で、チームの攻撃の要です。

ダルビッシュ有、大谷翔平、鈴木誠也
これに対し、前田選手の2024年防御率6.75、2025年序盤の7.88は、1000万ドルに見合う貢献度とは言い難いです。そして、役割の違いも評価に影響すると思います。
大谷選手やダルビッシュ選手はチームの柱であり、鈴木選手は主力打者として計算できます。
一方、前田選手は先発ローテーションの4~5番手ポジションで、絶対的な信頼を得られていません。
対照的に、NPBのトップ選手(例:山本由伸選手のNPB時代、約7億円)との比較では、MLBの年俸水準の高さが際立ちます。
山本選手はNPBで防御率1点台を記録し、沢村賞を3年連続受賞しましたが、年俸は前田選手の10分の1以下でした。
この差は、MLBの市場規模と選手の希少価値によるものですが、前田選手の現在の成績ではその価値を正当化しにくいのも事実です。
さらに、他の日本人投手(例:菊池雄星選手、約1200万ドル)も安定した成績を残しており、前田選手の評価が相対的に下がっていると推測できます。

山本由伸、菊池雄星
今後の年俸はどうなる?NPB復帰の可能性と収入見通し
2025年オフにFAとなる前田選手の次期契約は、100万ドル以下も現実的なシナリオです。
2024~2025年の不調を受け、MLBでの高額契約は難しく、マイナー契約や1年100万~300万ドルの短期契約が予想されます。
例えば、類似のキャリアを持つベテラン投手(例:リッチ・ヒル、2024年で44歳)は、1年100万ドル程度の契約でMLBに残留しています。
前田選手も同様の道をたどる可能性があります。一方、NPB復帰の可能性も高まっています。

前田健太 広島カープ復帰するか!?
広島東洋カープが最有力候補で、NPBでの年俸相場は2~3億円(約130万~200万ドル)です。(参考:ヤンキースから広島カープへ電撃復帰した黒田博樹投手は年俸約4億でした。)
カープでの実績(沢村賞2回、防御率2点台の安定感)やファン人気を考慮すると、3億円近いオファーも考えられます。
広島カープ入団時は大いに期待され、そして結果を残してきました。

2007年広島カープ入団と試合姿
ただし、前田選手はMLBでの挑戦を優先する姿勢を示しており、復帰のタイミングは不透明です。
そして注目すべきは、MLBの年金制度による長期的な収入です。
前田選手はMLB在籍9年以上で、62歳以降に年額25万ドル(約3700万円)以上の年金を受給可能です。
この制度は、選手会とMLBの協定に基づくもので、選手の現役引退後の生活を支えます。
前田選手の場合、2016年から2025年までの在籍期間により、満額に近い年金が期待されます。
NPB復帰を選べば、現役中の年俸は下がりますが、指導者や解説者としてのキャリアも期待されます。
例えば、黒田博樹氏や松坂大輔氏のように、NPB復帰後に解説者やコーチとして活躍するケースは多く、前田選手も同様の道を歩む可能性があります。
さらに、カープ復帰なら地域貢献やファンとの絆を深める機会も増え、精神的な充実感も得られるでしょう。
経済的には、MLB年金とNPBでの収入を合わせ、生涯年収は安定する見込みです。
【まとめ】前田健太の1000万ドル契約は過去の実績に対する報酬だった
前田健太選手の2025年年俸1000万ドルは、現在の成績と比較すると高額ですが、過去の実績とMLBの契約構造を考慮すれば一定の妥当性があります。
2023年の復調で勝ち取ったタイガースとの2年2400万ドル契約は、DFA後も経済的リスクを抑えた報酬を保証し、カブスとのマイナー契約で実質年俸76万ドルに落ち着きました。
2024~2025年の防御率6点台後半、制球難といった課題から、ファンからは「1000万ドルに見合わない」との厳しい声が上がります。
『The Athletic』は「前田の契約はリスクの高い賭けだった」と評し、コストパフォーマンスの低さを指摘します。
しかし、サイ・ヤング賞投票2位やローテーションでの貢献など、キャリア全体での価値は揺るぎません。
今後は年俸額よりも、MLBでの再起、NPB復帰の可能性、そしてカープでの「有終の美」をどこで迎えるかが焦点だと考えています。
MLBの年金制度による将来の安定収入(62歳以降で年3700万円超)も含め、前田選手のキャリアを冷静に見極めると、1000万ドルは「過去の栄光への報酬」として理解できます。
ファンとしては、彼の次なる一歩に注目したいところです。
前田選手は過去のインタビューで「野球への情熱は変わらない」と語っており、不屈の精神で再起を目指す姿に期待が集まります。
特に、カープ復帰なら、故郷での凱旋は感動的な物語となるでしょう。彼の挑戦を応援しつつ、そのキャリアの集大成を見届けたいです。
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